フランス風にさようなら

今回紹介する本は、雑誌ニューヨーカーに載った短編を常盤新平が選りすぐって翻訳した短編集である。

この短編集にはダンディズムとは何なのか、どうスマートに世間にそして女性に接するかが書かれている。

アメリカ流のダンディズムを学ぶのなら常盤新平のエッセイを読めばいいが、常盤新平が選んだ短編小説を読むのもまた面白いかなという事で、古書店にあった初版本を手に取った。僕は古書店で見つけて思わず買ったので、普通に金額を払っているが、ネットで買えばおそらく安いと思う。

 

フランス風にさようなら

この短編集の中で僕が一番好きだった作品は、アーウィンショウが書いた表題作のフランス風にさようならだった。この話は、戦争から久々に帰ってきた男と女の一瞬の話である。

出来立てのカップルがある。女は男に惚れ切っている。しかし男は軍人である。故に戦場に行かなければならない。さらに男は女と別れたばかりだった。「あなたがいない2か月間どうしたらいいの?」と泣きすがる女に、男は「めんどくさいな。。。」と思ってしまった。男はしばらく独身でいたかったのだ。

しかし、いざ帰ってきた当日。(実際は物語はここからはじまり、これまでの下りは物語の中で回想される。)どこか女はそっけない。男が必死に誘ってもつれない。別の男が出来ていたのだ。女は男から去っていく。男はそれをひきとめない。

 

去る者を追わずのダンディズム

この単純なストーリーには男心がぎゅっと詰まっている。これこそがハードボイルドだ。

男心は単純だ。一度はめんどくさいと思ったが、手のひらから零れ落ちると急に手に入れたくなる。

つまりこういう事だ。簡単に手に入れられるようなものに興味はなく、手に入らないものに憧れる。富や名声、なんだってそうだ、このわがままさえなくしてしまえば、もっと幸せに生きられるはずなのに、それができない。ただ同時に魅力的でもなくなってしまう。不器用だとわかっていても、その生き方を貫く。そこにダンディズムがあると思う。

 

他人である女性の幸せが最優先

最後に。手から零れ落ちそうになったものを追わず、どうするか。幸せを願うのである。すっと引いて、幸せを願うのである。このダンディズムがフランス風にさようならというタイトルに凝縮されているのだと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUTこの記事をかいた人

元シンガポール在住のエンジニア。趣味は旅行と、本を読むことと、走ることと、ヨガと、サーフィンと、音楽を聞くことと、カメラと。。。何かに依存せずに自分を持っている人を尊敬します。