「いき」の構造

「上等、上等、あったかい味噌汁さえありゃ充分よ。あとはおしんこと海苔とタラコ一腹ね、辛子のきいた納豆、これにはね、生ねぎを細かく刻んでたっぷり入れてくれよ、あとは塩昆布に生卵でもそえてくれりゃ、もう何もいらねえよ、おばちゃん。」

 

いやー粋ですねぇ。フーテンの寅、こと車寅次郎から学ぶことはとても多いです。私もいつか、寅次郎のような粋な男になりたいです。

 

でも粋ってどういうことなんだろう。

 

今回は「いき」の構造を紹介します。

 

 

この本との出会い

本書は人を引き付ける魅力があると思います。まず、タイトルからして気になります。「いき」とは、息?粋?それとも意気?私がこの本を最初に知ったきっかけというのは忘れてしまいましたが、多くの本を読む中で、この本を紹介している本は数多くありました。あまりに多くの人が挙げているので、いやでも目に付いたというのが本当でしょうか?しかし、岩波文庫というのもあり、敷居を高く感じていました。

結局、本書を知ってから読むまで1年くらいかかったでしょうか?それでも読む運命にあったのは間違いありません。

 

九鬼周造という哲学者

この特異で難解な本(もとは論文だが本書はいくつかの論文を寄せ集めたモノ)を書いた九鬼周造とは明治時代の哲学者です。彼は「二元性」を追求した人でした。
「二元性」とは、「偶然性」と「必然性」や、「自己」と「他者」など、一つのものが二つの原理によって構成されていることです。つまり、ひとつの事象は事なる二つの側面を持つという事です。「善」と「悪」、「陰」と「陽」、「光」と「闇」など、この世界にはいろいろな二元性があります。九鬼周造とはこの二元性について追及した哲学者なのです。
そんな著者のが考える、いや、そんな著者が言葉にして説明してくれた「いき」とは、どのようなものなのでしょうか?

 

 

「いき」って何なの?

「いき」って何か説明できますか?わたしはできませんでした。試しに妻に聞いたところ、「寅さん」だそうです。これはこれで分かりやすいですが、江戸前ってことでしょうか?しっくりくるし、かなり惜しいですが、これでは「いき」の説明にはなっていません。

赤味のかかった京紫より、青味のかかった江戸紫の方が「いき」です。
よこしまより、たてしまの方が「いき」です。
日本人であるならば、この感覚は分かると思います。では、「いき」って何なの?というと説明できない。今風に言うならかっこいい?でしょうか?いや、それは違います。京紫のほうがかっこいい場合もありますよね。
「いき」って、感覚では分かるけど、それが何かを言い表す事って、すごく難しいんです。

 

 

九鬼周造のアプローチ

この図を見て、何か分かりますか?

 

「いき」の構造

 

 

普通の人は分からないですよね?著者はこの図の各頂点を結ぶ面に対して説明しています。例えば下記のような感じです。

 

 

「さび」とは、O、上品、地味の作る三角形と、P、意気、渋味のつくる三角形とを両端面に有する三角柱の名称である。わが大和民族の趣味上の特色は、この三角柱が三角柱の形で現勢的に存在する点にある。

 

説明聞いても分からないですよね?わたしも10回読んでも分からなかったです。
いずれにしろ、このアプローチからも「二元性」を追い求めた著者のスタイルが見えてきます。

 

 

で、結局「いき」って何なの?

著者は、下記のように「いき」を定義しています。

 

垢抜して(諦)、張のある(意気地)、色っぽさ(媚態)

 

また、このようにも言っています。

 

運命によって<諦め>を得た<媚態>が<意気地>の自由に生きるのが<いき>である。

 

まさにこれらの文にこの本の神髄があると感じます。難解すぎる分の中にキラリと光るものがあります。日常に溢れているものの、誰も明確に説明できない「いき」。それと真剣に向き合う事で生まれた答えがこのシンプルな文なのだと思います。

さて、如何でしたでしょうか?
確かに「いき」の構造は難しい本です。ですが、読むことで日本語に対する思いが変わると思います。少しでも興味が出た方は是非読んでみてください。
ちなみにKindleゴリ押しの私ですが、この本はKindleで読んだ後に文庫でも買いました。笑
それくらい、手元(枕元?)において何度も読み返したくなる魅力がある本なのです。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

元シンガポール在住のエンジニア。趣味は旅行と、本を読むことと、走ることと、ヨガと、サーフィンと、音楽を聞くことと、カメラと。。。何かに依存せずに自分を持っている人を尊敬します。