ラーマーヤナ―インド古典物語

東南アジアを旅行していて思う事があります。

 

物価が安いため、食べものやお土産にも目が眩みがちですが、やっぱり外せないのは寺院や洞窟などの歴史的名所。大昔に栄えていたであろう場所を巡るのはとてもロマンティックな体験です。そして、それらの遺跡に行くと必ずと言っていいほど綺麗な装飾が施されているのです。

この飾りって綺麗だけど、何なんだろう。

 

今回紹介する物語を読んでおけば、東南アジアへの旅行が一段と楽しいものになります。レグルス文庫から、インド古代叙事詩のラーマ―ヤナです。

 

 

 

 

 

この本を読もうと思ったきっかけ

私は旅行が大好きです。特に東南アジアの国々は大好きで、遺跡を巡るのも何気ない街中を散策するのも大好きです。東南アジアにはヒンドゥー圏も多くあり、ヒンドゥー教に関連した遺跡も多くあります。ヒンドゥーの遺跡には様々な美しいレリーフが刻まれていることが多いですが、いつも意味が分かりませんでした。なぜ、この人は手が20本もあるし顔もいっぱいあるの?この人間っぽい白いサルは何?ラーマーヤナの話を読めばもっと遺跡を楽しめるのではないか?そんな気持ちで、本書に手を伸ばしました。

 

 

どんなストーリー?

ラーマーヤナは、コーサラ国の王子ラーマの冒険の話です。シータという奥さんとラクシマナという弟、猿の王ハヌマーンがメインの登場人物です。ラーマは国を継ぐ予定でしたが、継母の策略により国を追放され、シータとラクシマナと共に森で生活することになります。そんな中、ランカの国の王ラーヴァナがシータをさらいます。ラーマはラクシマナと、ハヌマーンと共にランカに行き、ラーヴァナを退治し、シータを連れ戻します。無事連れ戻した後は、国に戻ってハッピーエンドというのが大まかなストーリーです。

 

 

当時の時代背景を読み解く

ラーマーヤナの物語にはランカという、インドに隣接した島(国)が出てきます。いうまでもなく、これは現在のスリランカの事で、当時のスリランカとの関係が分かります。
物語の中でいうとランカは悪魔が支配する島で、ランカの王ラーヴァナにシータが誘拐されてしまいます。このラーヴァナとは顔が10個、手が20個もある悪魔の事で、当時それだけインド人がスリランカを恐れていた、敵視していた、もしくは憎んでいたことが分かります。
このように古代インドでは、大衆的な物語にスリランカのイメージを植え付けることで民族の統一化(ネイションビルディング)がなされていた時代背景も浮かんできます。

また、スリランカ側の視座からも時代背景を見る事が出来ます。スリランカは仏教国ですが、スリランカはインドとの戦いに敗れるたびに王朝を南に移していました。つまり古代スリランカ王朝は常にインドと対立していて、決してポジティブなイメージではなかったことが分かります。また、スリランカは政治的な関係で、インドから王妃をもらったこともあります。このことから、アヌラーダプラや、ポロンナルワなどの古い王朝の遺跡に、ヒンドゥー教の影を見る事は納得できます。

 

 

ヒンドゥー教徒の生活に浸透しているラーマーヤナは正真正銘の古典

一般にラーマーヤナのヴァールミーキとされています。ですがこれはヴァールミーキが想像した話ではなく、過去に伝えられてきた伝説をヴァールミーキが文章に整理したに過ぎません。文章になる以前にも、様々な語り手というフィルターを通っており、そのたびに適宜改編され、物語が洗練されてきたのだと思います。外山滋比古著、思考の整理学の言葉を借りるなら、この本はまさに風化の試練を経ており、正真正銘の古典です。
日本でいうと平家物語のようなものでしょうか?物語というのは時代を経て、様々な語り手に受け継がれてこそ、洗練されるのです。

インドでは一般に、シータのような奥さんだ、ラクシマナのような弟だ、という褒め言葉も使われるそうです。このようにヒンドゥー教徒の生活に浸透しているラーマーヤナは、ただ古い物語というだけでなく、正真正銘の古典なのです。

 

 

ヒンドゥー教徒でない人からしたラーマーヤナ

ジョグジャカルタにあるヒンドゥー遺跡、プランバナン寺院群の壁に書かれているラーマーヤナの物語は見事です。
また、バリの有名なダンス、ケチャダンスもラーマーヤナのある一部がモチーフになっています。
これらの芸術を鑑賞するのに、ストーリーを知っているのと知らないのでは、雲泥の差があります。バリのケチャダンスは4回ほど見てますが、ストーリーを知った後で見た最後の一回は、特別面白かったです。ケチャダンスを見た後、空港に向かうタクシーの中では、当然バリニーズのドライバーとラーマーヤナの話で盛り上がる事ができました。こういう古典は、自分の知識として血肉となるだけではなく、社交上のツールにもなるので、読んだことの無い方は是非一読することをお勧めします。

 

さて、如何でしたでしょうか?
ヒンドゥー教になじみのある人もない人も楽しめる内容だと思います。ラーマーヤナを知っていると、各地ヒンドゥー遺跡も楽しめますし、何より東南アジアの友達を作りやすくなります。河田清史氏の訳は非常に読みやすいですし、おススメな本です。
次回は古代インド叙事詩でラーマーヤナと並んで有名な、マハーバーラタを読んでみたいと思います。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

元シンガポール在住のエンジニア。趣味は旅行と、本を読むことと、走ることと、ヨガと、サーフィンと、音楽を聞くことと、カメラと。。。何かに依存せずに自分を持っている人を尊敬します。